その言葉にこくりと頷き、歩幅を合わせてゆっくりと歩いてくれた。

その小さな心遣いも本来であるのならばとても嬉しいのに、こんなにも申し訳ない気持ちになる。

「静綺ちゃん今日はあんまり元気がないね…。暑いし疲れちゃったかな?」

「そんな事ないです。昴さんの方こそお仕事で疲れているのに今日は付き合ってもらって申し訳ないです」

「いやいやそれは全然気にしないで。俺の方が一緒に行きたいって言ったんだから。
それより今から行く焼き肉屋さんすごいんだ。きちんと個室で予約してあるから人目も気にしなくていいし
お肉のお寿司とかもあるんだよ」

「お肉のお寿司?!そんなの食べたことない。楽しみです。何から何まで気遣ってもらってすいません…
昴さんって本当に優しいですよね…。元カノさんが誰にでも優しいのが嫌だって言った気持ちも分かりますよ。
こんなに優しくされちゃったら、女の子はすぐに昴さんを好きになってしまいますよ」

何の気なしに言った言葉だった。
けれど昴さんは足をぴたりと止めて、私を見下ろした。

私を見つめる彼の顔を、思わずボーっと見つめてしまった。キリっと上がった眉毛も、黒目がちの大きな瞳が笑うとほんの少し垂れ下がり、もっと優しい表情になる。

口角がいつも上がっていて、どうしてそんな優しい顔ばかり出来るんだろうと不思議になる。
一歩前へ足を出すと、彼は私の肩へと頭を乗せた。

低いトーン、けれど優しい声でぽつりと言った。

「じゃあ静綺ちゃんも俺の事好きになってくれる…?」