「静綺ちゃんも今日綺麗だね」

その口から紡がれる言葉は照れくさい程優しい。ドラマのような台詞を平気で吐けるのだから、この人は根っからの人たらしである事は間違いない。

「昴さんは口が巧いんだから」

「俺は本当の事しか言わないもん。その服よく似合ってる。
それに俺静綺ちゃんのふわふわの髪の毛好き」

ミディアムロングのふわふわのくせっ毛。それは昔からのコンプレックスのひとつであったのに、昴さんに褒められると不思議とコンプレックスさえ吹っ飛んでいきそう。

「でも俺あの髪型好きだったなー…。静綺ちゃんが真央と花火大会に行った時にアップにしてた髪型。
大人っぽくてよく似合ってた」

「あれは瑠璃さんがしてくれたんです」

「今度どっかに一緒に出掛ける時にあの髪型してよ。俺好きなんだ、あれ」

社交辞令社交辞令。自分に言い聞かせる。きっともうこの先昴さんと出掛ける機会なんてないだろうし、あの髪型が似合っていると言ってくれてるのも彼にとっては何ともないリップサービスなんだ。


並んで街を歩くだけで目立ってしまう。

隣に居る昴さんは顔を隠して、服装だってティシャツとジーンズというラフな格好だったけれど
歩くだけでオーラが飛び散ってしまうような人で、待ちゆく人の視線が自然と集まってきているような気がする。

手足は長くて、背筋を伸ばして堂々と歩く。けれど時たま隣を歩く私を気にして歩幅を合わせてくれる。間違っても私を置いて先をずかずか歩いて行ってしまう人ではない。

こんな素敵な人に優しくされたら、女の子だったら誰だって勘違いしちゃうよね…。