「でもお前このバイトはいつまで続けるんだ?大学生だろう?」

その言葉にぎくりとする。今は8月の半ば。けれど大学の夏休みは9月の中旬までだった。

だから――学校が始まってしまえば、バイトは終わる。このバイトに入った当初は不安でいっぱいだったけれど、案外直ぐに馴染んで、実家に帰らない位楽しくなってしまった。

それにこのバイトをしなければ皆に出会えなかったし、真央にも出会えなかった。芸能人という自分とはかけ離れた世界の人達がどれだけ努力をしているのかも分からぬままだった。


契約は9月の中旬。大学が始まるまで。それが終わったら…私のこの生活は終わって、皆とも会えなくなる。

連絡先は知っているけれど、用もないのに連絡を取り合うのはなんか変だ。瑠璃さんとは普通に会えるかもしれないけれど、真央とはもう会えなくなる。

元々は接点のなかった世界の人達だ。

「9月中旬くらいかな…大学も始まるしね」

「そりゃあ寂しい。またコンビニ生活に戻るのか…。
それにしても静綺が来て寮の雰囲気も明るくなったな。真央も仕事をする気になってくれたみたいだし。」

「それは私のお陰じゃないよ。真央は元々仕事の好きな人だもん」

「でも寂しいだろうよ。あいつは」

たっさんの言葉に曖昧に笑う。

「たっさんお昼は素麺でも食べようか。たまには食堂で。今日は皆も出払っているし、ひとりは寂しいんだもん」

「おお、いいな、夏と言えば素麺だ」