「ありがとう。優しいね…真央は」
「別に通常運行だ。それよりお前少しは女らしくお洒落でもしていけよ?昴の隣に並ぶ女が冴えない女だと可哀想で仕方がない」
いつものような憎まれ口だと思ったけれど、それはどこか優しかった。だから切なさが一層増していく。
坂上さんの後に続いて家を出た真央の背中を見送り、不安な気持ちでいっぱいだった。
午前中ぼんやりしても不安は募って行くばかり。
皆仕事で出払った寮でやる事もなく、ぼんやりとお昼から出かける準備をしていても考える事言えば真央の事ばかりだった。
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窓から外を覗いたら鬱蒼と茂った木々の間から太陽の光が見える。
今日も30度を優に超える炎天下。ふと下へ目をやると警備員のたっさんが麦わら帽子を被って外で草むしりをする姿が見えた。
「たっさんー」
「おお、静綺」
冷えた麦茶を持っていくと、たっさんは顔をくしゃくしゃにして汗の粒が流れる額を腕で拭った。
「手伝うよ。暇だし」
「日焼けするぞ」
「日焼けは嫌。でも日焼け止めクリーム塗ってるし
何かしてないと落ち着かないの」
「働きもんだなーおめーは」
太陽の陽が突き刺すような炎天下の中、私はたっさんと並んで草むしりをする。
どこまでもびっしりと生い茂っていて、あんまり意味もない気がするんだけど。何かをしていないと落ち着かないのは事実だ。
こんな状況で豊さんのライブに行って楽しめるんだろうか…。
「静綺が来て随分経つなぁー、毎日美味しい飯を食わされて太ったような気がする」
「ハハッ。大丈夫カロリーの事も考えてる献立だから。」