その夜も考える事と言えば真央の事ばかりだった。
ただ機嫌が悪いとか何かをした訳じゃなくって、具合いが悪いんだとしたら
仕事への責任感は人一倍強い。だからこそ自分ひとりで抱えて我慢ばかりしてしまう。
我儘な癖にいざとなると全然我儘ではない。自己主張が激しい癖に、いざという時に自分の殻に閉じこもる。
山之内さんが心配しない訳なかった。放っておけるはずもなく。しかしその儚さが彼の魅力を引き出してあるのだとすれば、それは切なすぎる。
―――――
「真央くん今日はまた外ロケね。その後に午後からスタジオに入るから」
「おう」
朝起きてキッチンの中からも真央をちらちら見ていた。…やっぱり食欲ない。絶対に具合い悪いんだ。顔色だってやっぱり悪い。
坂上さんに伝えようとも思ったけれど、昨日真央から絶対に言うなと言われたばかり。真央が周りに迷惑をかけたくないって気持ちもとても分かるから、迷う。
「もうそろそろ撮影も終わるねー。すっごく良いドラマに仕上がりそうだから楽しみ~」
「まあな…」
そんな話をしながら寮から出ていくふたりを見送る事しか出来なかった。
私は真央の肩を掴んで、保冷バックを無理やり持たせた。
それを手に持った真央は、不思議な顔をしていた。…つーかやっぱり少しだけ触れた指先が熱い。本人は涼しい顔をしているつもりかもしれないけれど、私を舐めないでよ。この数か月どれだけあんたを見てきたと思ってんのよ。
「何?」
「食欲無いんでしょう?レモンと紅茶のゼリー作っておいたから。
それにポカリも。後熱さましの薬。市販の薬じゃあ効きは悪いかもしれないけど、ないよりはマシでしょう?
後消化に良い物お弁当に入れておいたから食べれるならば食べてッ」