その言葉に彼の足がぴたりと止まる。そして私を真っ直ぐに見つめるんだ。

あの花火大会で見せた横顔のように、少し切ないその眼差しに…どうしても目が離せなくなってしまう。

こんなにもあなたに惹きつけられている。それこそが才能だったのに。

「まぁ…なんだその…お前は優しいからな。そういう言葉を掛けてくれるのは…分かってたけどさ。
つーかどうした?わざわざ俺の部屋へ来て。何か話があったんじゃないのか?」

思っていたより優しい眼差しをしていた。不意に見せるその視線に思わず自分の気持ちを伝えたくなってしまう。

でも口に出したらきっとあなたは困るし、振られて気まずくなるのは絶対に嫌。私だってまさか彼と付き合えるなんて夢見る程馬鹿ではないもん。

無言のまま、真央の方へ茶色の封筒を差し出した。

不思議な顔をしてそれを受け取って、中身を見て眼を丸くする。そして少しだけ苛立った表情をしてテーブルに封筒を叩きつけた。

「何だこれは?」

「花火大会の時に買ってくれた浴衣代…」

「そんなのいらないって言っただろう?!大体あれは俺が勝手に買って来たものだ!」

「でもあんな高額な物…貰えない…」

「俺にとっちゃあんな金…小銭に過ぎない」

「あんたにとっちゃそうかもしれないけど、私にとっては大金だわ。
それに理由もなくあんな高価な物貰えない…」

喧嘩なんてしたくないのに…。ただただ普通に笑って会話がしたかっただけなのに、どうしてこうなっちゃうんだろう。

「俺が理由もなくお前に浴衣なんてあげるかと思ったのかよ?!」

余りに大きな声に肩がびくりと上がる。