テーブルの前で腰を下ろすと、真央は何だか落ち着かない様子で狭い部屋の中をウロウロと右や左へ行ったり来たり。

ばちりと目が合うと、何故か慌てて逸らす。

「あー…なんだその…さっきはすまなかったな」

「え?」

「昴との喧嘩でお前を巻き込むような形になってしまって悪かったなって…。
その…別にお前がどうとかって意味ではねぇから。ただ単に俺と昴があんまり仲良くないだけと言うか…」

「そうなの?すっごく仲良さそうだけど?本当に仲良くなかったら言い合いも出来ないでしょうが…」

「べっつにあいつとなんか仲良くねぇよ。10代の頃から知り合いなだけだ。
そりゃーガキだった頃は特別何も考えずに仲良くはしてた頃もあったけどさ。
俺と昴じゃあ人間の出来って奴が違うってんだよ」

「それって…自分を下に見てるって事?」

「そりゃあそうだろう。俺は子役時代があるから仕事がきてるってだけで、昴は実力で仕事を取ってるんだからな」

だからそれはとても姫岡真央らしくない言葉だわ。

けれどきっとこれがこの人の本質なのかもしれない。俺様で自信があるように見せて、実はコンプレックスだらけで…あんなに素敵な演技を出来るのに、自分の俳優としての力を信じ切れない。

誰だってそうかもしれない。自分と誰かを比べてしまって、弱くなる。そんな真央の気持ちはほんの少し理解るような気もする。

「そんな事ない。私役者としてあなたが昴さんに負けてるとも劣ってるとも思わないわ」