いつもはハキハキと喋る山之内さんとは違って、酷く弱々しかった。
こんなに真央の事を想っているのに…山之内さんだけじゃない。坂上さんだって。

そしてそれを真央自身が1番痛感している事だろう。だからこそ…仕事が出来なくなってしまった事に対して後ろめたい気持ちがあるんじゃないだろうか。

「所属するタレントを守るのが私達の仕事なのにね…。上手くいかない事だらけだった。
真央が傷つきやすくて繊細なのは小さい頃からこの仕事をしているせいで、私達がきちんとサポートを出来なかったからだわ。
大人になって演技に磨きがかかってきたって、それを面白くない人間は沢山いてどうにか姫岡真央のあら探しをしようとする人間はこの業界にいっぱいいる。
今度はその重圧に耐えきれなくなってあの子をあんな風にさせてしまって。
再び休業するって決まった時真央の仕事は昴に流れて行って、あの子すっごくショック受けてたと思う。
でもグリュッグは昴だけが大切な訳じゃなくって…ちゃんと真央の事だって大切に想ってるのにね…」

山之内さんの曇りなき想いが伝わってきて、胸が更に苦しくなる。

「でも真央はそんな山之内さんの気持ちをちゃんと理解していると思います…」

「え?」

「あの人って素直じゃなくって天邪鬼な人だから自分の気持ちを上手く伝えられないだけで、周りの気持ちはきちんと汲める人だと私は思うから。
そうじゃなかったら、あんなに人に影響を与えるような素敵な演技が出来るとは思えないから。
それに真央がスタッフさんを大切に想う気持ちがあるのは、やっぱり山之内さんたちに大切にされている記憶があるからだと思います」

私の言葉に山之内さんは力なく笑った。