「私お茶淹れますね…」
「ごめんね?静綺ちゃん…。
昴ももう休みなさい。明日はドラマの撮影も入ってるし、雑誌のインタビューも入ってるんでしょう?」
「あぁ…何かごめん。山之内さん…。俺もあんないつもの真央の挑発に乗ってしまって」
「いいのよ。分かってるの。あの子が言いたい事は、それに昴のせいじゃない」
私の肩をポンッと叩いた昴さんは「ごめんな」と一言言ってそのまま食堂を後にした。
キッチンでお茶を淹れている間も山之内さんの肩を落としたままで、何度も深いため息を吐いた。
テーブルにお茶を置くと、顔を上げて「ありがとう」と笑顔を作った。やっぱり山之内さんの顔…疲れている。最近は特に忙しそうで、朝早くから仕事に行って夜遅くに帰って来る生活が続いている。
「山之内さん、ご飯は?」
「今日はいいわ…。あんまり食欲なくって…」
「そうですか…。冷蔵庫に入れておくのでもしもお腹が空いたら食べてくださいね?」
「ありがとう。静綺ちゃんは本当に良い子ね。
なんか私ってば余裕を失くしてこんな所を見せちゃってごめんなさいね?」
「そんな……」
再び大きなため息を吐いてお茶を口に運ぶ。
ぽろりと独り言を話すように言った。
「あの子にそういう風に思わせてしまってるのには私に原因があるのよ…。
私ね真央が子役時代にマネージャーをしていた時、あの子の気持ちなんて考えずに沢山仕事を入れて…
私も新米マネージャーだったから姫岡真央が売れれば売れる程会社に自分自身も認められるのが嬉しくって…いつの間にかあの子の気持ちは限界にきてしまっていたの。
親御さんの強い希望で中学に上がる頃に活動は休止したけれど、もうその時は既に真央は普通の男の子として生活をするのが難しくなった…。
それでも高校を卒業するのと同時にまた芸能界で活動をしたいって言ってくれた時は本当に嬉しかったのに――なのに…」