「あ、ごめんなさい。昴さんもお腹空いてますよね?
直ぐに用意しますから、部屋に行って着替えてきてくださいッ」
椅子に置いておいたエプロンを付け直してキッチンに戻ると、豊さんがそっと近寄って来た。
「気にすることないよ。真央くんは素直じゃないから」
「豊さん…。別にああいう風に言われるのは慣れてるから」
「それより本当に昴くんと僕のお笑いライブに来るの?」
「あー…いいんでしょうかね。昴さん超売れっ子だからバレたりしないかなー…」
「僕が言ってるのはそういう意味じゃないんだけど、やっぱり天然だ?」
「豊さんも意地悪ですよねぇ。あぁそれにしても豊さんのライブは楽しみだけど、心配だなぁ~……
いっそ私が男装して変装するのはどうでしょう?!」
そう言ったら豊さんは目を細めてまた笑った。
瑠璃さんと豊さんがふたりでじゃれあって食堂でテレビを見ている。
先程帰ってきたばかりの真央と昴さんと坂上さんにご飯を出すと、真央は機嫌が悪そうに黙り込んだままだった。
今日は真央が好きだと言っていたオムライスにしたのに…。黙ったまま黙々とご飯を口に運ぶ。
3人で座っていても話題の中心は昴さんで、ダイニングテーブルの横のキッチンから作業をしながらその様子を横目で見つめる。
「俺、オムライスって大好きー。てゆーか静綺ちゃんのご飯は何でも美味しいけど」
「卵がふわふわだねぇ~。僕もオムライス大好き。
真央くんも好きだよね?」
坂上さんが機嫌の悪い真央に気を遣ってか言葉を掛けるが、じろりと睨みをきかす。