ぷんぷん怒りながら真央は帽子を脱いでソファーに寝っ転がってしまった。

…そんなつもりじゃなかったのに。どうして素直に’おかえりなさい。お疲れ様’って言ってあげれないのだろうか。私って…本当に駄目な女だ。

昴さんはにこりとこちらへ微笑みを落として、直ぐに私の手に持っているチケットを奪い取った。

「これー…豊さんのお笑いライブのチケット?」

「あ、そうなんです。今貰って。私ずっと行って見たいって言ってたから」

「ふ~ん…。あ、丁度この日俺午後からオフなんだ。
静綺ちゃん良かったら一緒に行かない?俺も久しぶりに豊さんのお笑いみたいし」

「え?!」

声を上げたのと同時にソファーに寝転ぶ真央が立ち上がった。

真っ青な顔をしてこちらを見つめる。 そして立ち上がってこちらへ来たかと思えばそのチケットを奪い去って行った。

震える手でチケットを凝視して、何故か私を睨みつける。 今にもチケットを破ってしまいそうな勢いだ。

「何だよ真央、お前は後1週間は撮影が続くんだろう?オフは無いって坂上さんがさっき言ってたぞ?」

呆れ顔の昴さんは真央の手からチケットを奪い返す。

「うるせぇ!別に………お笑いライブなんつーもんに興味はねぇよッ」

「そうかそうかそれはそれは、でどう?静綺ちゃん俺と一緒に行こうよ?」

「え?でも……」

ちらりと真央へ視線を送ると、ぷいっとそっぽを向かれた。
真央の様子なんてお構いなしに昴さんは続ける。

「いっつも静綺ちゃんにはお世話になってるからさ。帰りに美味しい物でもご馳走するよ」

ガンッと食堂の入り口の壁を殴る音が室内に響いた。