「あ、真央くん」

「もぉ~、その手には乗りませんって!
大体豊さんまで何ですか~?まるで私が真央に会いたいみたいに言って~」

どうせまたテレビの中でしょう?受け取ったお笑いライブのチケットをぴらぴらと揺らすと、突然腕がグイっと掴まれる。

「俺がどうした?」

後ろを振り返るとそこには真央が立っており、掴まれた腕から熱が産まれるのを感じてついつい後ずさりする。

「な、な、なによ。突然帰ってこないでよ!
び、びっくりしたなぁ~…」

その言葉に真央はムゥッとした表情を浮かべる。

「何だよ人を化け物みたいな扱いしやがって。
大体ここは俺が暮らしている寮なんだからいつ帰ってこようが俺の勝手だろう?!」

離れたはずなのに身を前に屈めて顔をこちらへ近づける。
意識しないなんて無理!

「う、うっさいわね。ちょっとあんまり近寄らないでよッ!」

「な、なんだ?今度はばい菌扱いかよ…」

自分の中にこんなに素直じゃない自分がいるとは。
けれど意識すると駄目なんだ。自然に思っている事と逆の行動に出てしまう。

「静綺ちゃんただいま~…はぁ~疲れた~。真央とたまたま現場が近かったから坂上さんについで乗せてもらった~」

「あ、昴さんおかえりなさい。今日もお疲れ様です!」

真央の後ろから昴さんが顔を出す。
意識をしていない昴さんにだったら普通に接する事が出来るのに。

「何かお前俺と昴への態度違くねぇか?!
俺だって疲れて帰って来てんのに気分が悪いぞ?!」