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「今日も真央ちゃんは遅いねぇ」

「そうですねぇ。」

「ねぇ、寂しい?!」

夕食を瑠璃さんと豊さんと先に済ませて、皆でテレビの前に集まる。すると瑠璃さんがこちらへ身を乗り出してニヤニヤと笑いながら私へ問いかけた。

「さ、寂しくなんかないですけど?!うるさいのがいなくって楽だなーって…」

「ふ~ん…」

私と瑠璃さんの会話を豊さんは少し離れた場所で本の隙間からこちらをジッと見つめた。
心なしか口元が笑っている気がする。

「あ!真央くんだ」

豊さんの声に体が勝手に反応してしまう。思わず扉の方を向いてみるが、そこには誰もいなかった。

豊さんの方を向くと顔を本で隠しながらぷぷっと小さく笑い、テレビ画面を指さした。そこには確かに真央が映っていた。

お菓子のCMで爽やかな笑顔を浮かべてこちらへ微笑む。

「静綺ちゃん、やっぱり天然?」

小首を傾げた豊さんが意地悪な質問をする。それはいつかも同じ質問をされた気がする。

「天然じゃありませんッ!」

「そかそか、それはそれは。
そういえば、今度俺の出るお笑いライブのチケットあるけどいる?
この間瑠璃さん誘った時に行けなくって残念って言ってたから」

豊さんの手には、2枚のチケット。ぴらぴらと宙を揺れるチケットを手に取って「行く!」と言うと豊さんはまた顔を隠しながら「食い気味かよ」とクスクスと笑う。

遊ばれているんじゃないだろうか…。ここの寮の男性陣は意地悪な人が多い。豊さんも無口かと思えばちょっぴり意地悪だし、昴さんは黒王子だし。真央は言わずもがなだし。