「譲いいの。私が悪いんだし」

「良くないでしょう?しおりは優しいから静綺を庇ってるかもしれないけど、こういう事はハッキリとさせておいた方がいいだろ。
それに俺だってこうなっても拓馬と仲良くしてるよ?本当の友達ってそういうもんだろう?」

花火が頭上で大きな音を立てて大輪の花を咲かせているのが分かる。
しかし私は何も言えずにその場に立ち尽くしたまま、動けなかった。

足が震えているのが分かる。

え?これって何?私が悪者ってか?何故か譲は私を責めるし、たっくんは何も言わずに気まずそうに黙り込むだけ。当の本人しおりは涙を流している。

どう見たって私が悪者で、けれど責められている理由は全然分からない。


確かにしおりとは距離を置いていた。けれど意地悪をしたつもりはないし。たっくんと譲は幼馴染だから仲良く出来るかもしれないけど、私はまだしおりと本当の笑顔で笑う事は出来ないと思ったから距離を置いていた。

それなのに、私が悪者?

浴衣の裾を持っていた手がジンジンと熱い。気を抜いたら今にも涙が零れ落ちそうだった。それでも唇を噛みしめ、ぐっと涙を堪えた。だって悔しいじゃない。

そんなの惨めだ。今ここで泣いてしまったらせっかく瑠璃さんに綺麗にしてもらったメイクは崩れるし、せっかく姫岡さんが用意してくれた深い赤の素敵な浴衣に涙なんか似合わない。

「別に俺も責めるつもりで静綺をここに呼んだんじゃねぇよ。…んな顔すんなよ…」

「譲。もういいって。私が悪いんだから――」