姫岡さんがしたいって言った射的をして、輪投げをして金魚すくいもした。
金魚すくいは得意な私が何匹も軽々とすくい上げてしまったが、姫岡さんは1匹も取れずじまい。した事がないらしい。

けれど極度の負けず嫌いらしい。何度も何度も網は破けてしまう。それでも何度も何度も挑戦していた。私が飽きてもう別の所に行こうと言っても、姫岡さんは聞かなかった。

コツを掴んですくえるようになるまで実に30分はかかったと思う。

それを見てやっぱりこの人は努力の人なのだと改めて思った。出来るまで絶対に諦めないし、極度の負けず嫌い。何でも軽々とやってしまえると思っていたけれど、そういう所は人間らしい。それに…努力出来るってすごい事だと思うし。


屋台を回るのは想像以上に楽しかった。楽し気な屋台の雰囲気は昔から好きだ。けれど今日楽しかったのは――

「何だ?」

「別に…」

まさか目の前にいるこいつと一緒だったからだとは、信じたくない。

「しっかしマスクをしていると飲食をするのが大変で苛つくな…」

そう言いながらマスクを少し浮かせてストローを中に通す姫岡さんを見て、また笑えてきちゃうんだ。

その時だった。携帯に譲から着信が入ったのは、それと同時に空に大きな花火が音を立てて上がって行った。

「はい。もしもし?
うん、来ているよ。あぁ…分かった。じゃあ今からそっちに向かうね」

電話を切って現実に引き戻される。さっきまで楽しい気持ちでいっぱいだったのに、途端に憂鬱な気持ちになる。