「俺は結構えぐい事書かれてるからな。
別に女遊びも激しくはないと思うんだが、昔は俳優やアイドルたちと飲みに行ってたからな。
ただ飲みに行ってただけでも大袈裟に書かれちまう世界だから疲れる」

’疲れる’と言った姫岡さんの声は、本当に疲れていそうだった。

いや、きっと大変なのは事実だろう。今は仕事をほぼしていないとはいえ、1年前までは映画やドラマに引っ張りだこだったのだろうから。

それだけ注目されていた芸能人ならば、芸能リポーターに追い掛け回されて当然だよね?私のような一般人には分からないけど、心労も溜まるってもんだろう。

あることない事書かれる世界だ。それに加えネット社会の現代、顔も知らない世界中の人から中傷や暴言を吐かれる事だって日常茶飯事だろうし。

瑠璃さんも言っていた。私みたいに売れないグラドルでも一定数のアンチがいる。って。そう考えたら真央ちゃんはそういう人たちの悪意の中心にいつもいたんじゃないかなぁ。って言ってた…。

「やっぱり芸能人って大変なんですね」

「今日は大丈夫だ。サングラスもマスクも持ってきている。変装はバッチリだ」

「それはそれで暑そう…」

私に付き合ってわざわざ花火大会なんて人混みに来てくれなくても良かったのに。
やっぱりなんだかんだ良い奴?

いやいや冷静に考えて見ろ。こいつが譲に勝手にラインの返信をしなければこんな事にはなっていなかった。

そうすればたっくんやしおりとももう二度と会わずに済んだはずだったのに…。

そんな話をしているうちに、たっくんたちの地元へ到着した。その頃にはすっかりと辺りも薄暗くなっていた。花火よりも少し早く到着してしまったようだ。