「おお。こうやって見ると真央と静綺お似合いじゃねぇかッ」

たっさんが変な事を言うから、思わず顔が熱くなっていく。

「そんな事ないよね?!」と否定の言葉を投げかけ姫岡さんの顔を見上げると、顔を真っ赤にして右手で口元を押さえる。

…だから何でそんな顔をするのよ。こっちの方が余計な意識をしてしまうではないか。


外に出る前に姫岡さんは下駄を私の足元へ置いてくれた。赤い浴衣と同じ色の小さな花びらが散らばった深紅の可愛い下駄だ。
そして無言のままふたり、車の中へ向かう。


気のせいだろうか。さっきから口数が少ないのは。こんな時こそ悪態のひとつでもついて、私を貶してくれた方が居心地が良いのだけど。

姫岡さんの車に乗るのは初めてだった。車種は詳しくないから知らないけれど、6人乗りの黒の大きめのワゴンだった。皮のシートがひんやりとしていてとても乗り心地が良い車だったから、私が知らないだけで高級車なのは当たり前だろうけど。

黒いハンドルを握る姫岡さんの横顔をちらりと覗き見する。

横顔でも造形の美しい人だ。通った鼻筋ツンとした小さい鼻先。…完璧な人って細かい造形さえも整っている。

深い紺の浴衣も悔しいけれど似合い過ぎている。何を着ても似合ってしまうのは、この人が元々美しい顔立ちと、細いけれど筋肉が程よくついているスタイルの良さのせいだ。

ハンドルを握る腕に太い筋が浮かび上がる。それさえもセクシーと感じてしまうのだから、芸能人オーラ恐ろしすぎる…。