「絶対に無理です。
てゆーか山之内さん本当に平気なんですか…?そんなに大きくはない花火大会ですけど…
姫岡さんみたいな有名人がそんな所に行ったら大騒ぎになるんじゃあ……スキャンダルとか…」

「大丈夫よ。別に恋愛禁止のアイドルでもないんだし、それにあの子だって変装くらいしていくでしょうよ。
私は嬉しいわ。ここ1年引きこもりがちだった真央が花火大会に行くって言いだすなんて。しかもあんな嬉しそうな顔は久しぶりに見た…」

まるで母親のような顔をして山之内さんはそう言ったけれど、不安でいっぱいだった。何でもない事を大袈裟に書き立てるのが芸能界だ。もしも姫岡さんの俳優としての経歴に傷でもついてしまったら…それこそ私なんかじゃ責任取れないよ。

「それに真央は随分静綺ちゃんがお気に入りなようだし?」

「は?」

「あーそれ瑠璃も思ったぁ~。真央ちゃん絶対静綺ちゃんが気に入ってるんだよね~。
何とも思ってない子をデートになんか誘わないでしょ~?」

「ありえないですよ。
今回の花火大会だって理由があって…別にふたりでデートするわけじゃないんだから…」

きっとからかっているに違いない。私にあった恋愛事情をうっかりと話してしまったもんだから、今回の花火大会だって私を笑いにくるに違いない。

そこに深い理由なんて絶対にない。断じてない。

山之内さんと瑠璃さんはキャッキャと楽しそうに話して盛り上がっているし、ふぅっと額の汗を拭って再び鏡越しに映る自分の姿を見つめる。