頭をぶんぶんと何度も振る。だってあり得ないよ。あいつ性格に難があるし、それに……そうじゃなくっても彼は人気芸能人。もしも私が好きになったって相手にしてくれる訳ないじゃないか。

つーか好きになんかなんないってば!

「静綺ちゃんによく似合っている浴衣ね」

「うんうん。ちょ~いい感じ。真央ちゃんセンス良いなぁ~…」

山之内さんが浴衣の着付けをしてくれた。

確かにこの赤い…赤というよりかはもっと深い赤。その浴衣は自分で言うのもなんだけど、私によく似合っていた。

控えめだけど、素敵なお花の柄が散りばめられていて…それに合わせた帯も帯留めも可愛らしいし、美しい。

「ヘアメイクもおっけーだよん。つーか…静綺ちゃん化粧映えするねぇ。元々どっちかって言うと派手な顔立ちだとは思ってたけど、女優さんみたいッ!
やっぱり赤いリップ似合うし、瑠璃って天才~」

そう言って、アップにしてくれた髪型に髪飾りをつけると、鏡に映った自分がまるで自分ではないような変な違和感があった。

「えぇ?!何か更に意地悪そうな顔になってる気が……ただでさえ知らない人には怖いって言われがちなのに…」

「もう静綺ちゃんは自分をよく分かってないよ。意地悪そうに見えて人から疎遠されがちなのは、怖い位綺麗だからじゃんかね。山之内さん」

瑠璃さんのその言葉に、山之内さんはこくりと頷く。
そして真剣な顔をして言ったのだ。

「本当に綺麗だわ。静綺ちゃんグリュッグからデビューしてみない?」