そんな話を瑠璃さんとしている時だった。
突然姫岡さんがキッチンにやって来て、私の腕を引っ張る。

その姿は何と浴衣だった。紺色の渋い色の浴衣が、明るい蜂蜜色の髪色によく合っている。

つーか浴衣を着てもかっこいいとか…。まあ何を着ても似合ってしまうんだろう。つーか、その恰好…もしかして…。

「真央ちゃん!どうしたの?その浴衣…どっか行くの?」

「おう、ちょっとな。こいつは借りる」

「えぇー?!もしかして静綺ちゃんとデートとか?!」

「ちょっと姫岡さん!私カレーを作っているんですけど……」

「こいつに誘われて無理やり…な?
カレーなんて後は煮込むだけだろう?瑠璃やっておけ」

「えぇーーーー瑠璃もデートついていきたい!」

瑠璃さんの言葉に’駄目だ’と姫岡さんはきっぱりと言い放った。少しだけ拗ねて唇を尖らせていたけれど、私を見てニヤニヤ笑って楽しんできてね~と言った。

豊さんや山之内さん…坂上さんもいるのに…。

何故に人さらいに遭いそうな私を助けてくれないの?!
腕を無理やり引っ張られて何故か姫岡さんの部屋に連れられる。


そういえば改めて彼の部屋を見るのは初めてだ。あの幽霊事件の時に一度だけ入った事があるが、じっくりと見る暇もなかったから。

姫岡さんの部屋はきちんと片付けられており、本棚には様々な書籍が入っていた。多分…仕事関係で読んでいる本だとは思うが。

戸棚の上には様々な盾が置かれている。きっと演技で賞を取った時の物だと思う。埃も被らずに飾られていた。

それ以外は実にシンプルな部屋だった。