今は仕事を休んでいるから自由な時間は沢山あるはずなのに、基本的に寮にいるし。芸能人の恋愛事情なんて知らないけど、普通の人より綺麗な女優さんや可愛いアイドルに会う機会は多いだろう。
それともあれくらいかっこいいと女も相当美人じゃないと相手にしない…てか?
私と呑気に花火大会に行っている場合なのだろうか。まぁいっか…。約束した事すら忘れてしまっているかもしれないし、もしも忘れていたら譲には突然バイトが入ったって言ってドタキャンしよう。
―――――
しかし私との思いとは裏腹に姫岡さんは本気だったようだ。
その週の週末土曜日。花火大会当日。
土曜日はバイトも一応休みになっている。だから皆のご飯は作らなくっていい。
けれど、私は家にも帰らずにこの寮で過ごし、何となくご飯も作っていた。そして瑠璃さんや山之内さんと他愛のないお喋りをするのはとても楽しかった。
だから土日も基本的にこの寮の住人たちと過ごす。それが居心地よくなってきた今日この頃だ。
そして今日も夕ご飯の準備に取り掛かろうとした時、だった――。
「静綺ちゃ~ん、今日のご飯何~?」
「今日は栄養たっぷりのカレーですよ」
「わーい瑠璃カレー大好き。ふぇー茄子なんか入れちゃうんだ」
「夏カレーですからね。大根とか入れても美味しいんですよ」
「そか。夏だもんね。あー夏ぅー…夏らしい事したいよぉ~…海にプールに…
あ!静綺ちゃん今度一緒に行かない?瑠璃がオフの日に。豊とか真央ちゃんも誘ってさ~」
「いいですけど…皆芸能人だから目立っちゃいますよね?」
「そりゃー真央ちゃんは目立つだろうねー。そこは変装させてさ。真央ちゃんの車ちょ~かっこいいんだよ~。
それに瑠璃と豊は芸能人って言っても名前も知られていない人らだからねぇ」