けれど姫岡さんが言った’王子様’と言うワードを聞いて1番に頭に浮かんだのは、この間たった一度だけ会った大滝昴だった。
あの人こそ正に王子様という名に相応しい。白馬なんか超似合っちゃうんだ。
「それって、昴さんとか?」
その名を出すと同時にさっきまで笑っていた姫岡さんの表情が曇る。
「何でそこで昴が出てくるんだよッ?!
あいつのどこが王子だ!腹黒野郎がよぉ……
それに昴がお前なんか相手にするかッ。あいつは業界の女にもモテモテなんだぞ?!」
あんたに言われなくたって分かってるわよ!冗談に決まってるでしょう。それをそこまで否定する事ないじゃないの。
「そんなの分かってます。私だってそこまで身の程知らずじゃないですもん。
けどなぁー……案外近くにいて出会ってるって…坂上さんとは歳が離れすぎてるしなぁ…」
「はぁ?!坂上さんとか…坂上さんには彼女がいるんだよッ!」
「あっそ。
かといって豊さんは王子様って柄じゃないしなぁ。
よく見たら結構かっこいい顔してるけどね」
「~~~…!だからお前って!
フンッ。俺は部屋に戻る!」
そう言って足音をわざとらしく立てて部屋に戻ってしまった。
だから何を怒っているのかいまいち掴めない奴だわ。
それにしても姫岡さんは彼女とかいるのかな…?あれだけかっこよくって人気もある俳優なら彼女のひとりやふたりはいるよね。
あー羨ましい。あんな綺麗な顔に生まれていたら、私だって引く手あまただったはずだ。けれど姫岡さんってあんまり女の匂いがしない人でもある