夜になり、指定されたホテルに向かった。

そこは高級ホテルで、しかも部屋はスイートルーム。


「良かったちゃんとした格好してきて···」


いつもより、更に大人っぽく仕上げてきた。

タイトな格好で、男の人は好きだろうなぁ···

どんな人だろう···

優しい人だと良いけど····


フロントを抜けて直接最上階にあるスイートに向かった。

インターフォンを押すと、扉がゆっくり開かれた。

そこには····


「!!!·····パパ····」


真「·····待ってたよ心愛····」


すぐさま振り返り帰ろうとしたら後ろに···


「俊ちゃん···修ちゃん····」


俊「逃げられたら困るからな。」


修「俺らずっと廊下で待ってたんだぞ。」


気付かなかった····


真「さぁ、入って。」


逃げることも出来ず、中に入った。


幸「心愛···」


「幸ちゃん···谷中さん···」


谷「ココちゃん、久し振りだね??」


「ご無沙汰してます····これ、どうぞ。」


手土産に持ってきたワインは、ワインが好きだとメールで言っていたから持ってきたんだけど····

やられた····


「ハァー···誰がメールしてたの??」


ここ何日間か連絡をとってた。


谷「俺だよ。」


「ハァー····まじですか····」


谷「騙すようなことしてごめんね??」


「···どうやってこのことがわかったんですか??」


谷「····ココちゃんのママから····知りたかったら連絡してみろって言われて···麗華は何も話してくれなかったけど·····」


なるほど····


「····それで、知りたかったことはわかりましたか??」


谷「·····ココちゃんの過去に何があったのか····それはなんとなく····」


「·······それ以上は···知る必要のないことですよ····」


黙って玄関に向かうと、肩を捕まれ、抱き締められた。


「·····パパ···」


真「·····っ·····ヒック····」


ポタポタと、頭に涙が降ってくる。


「何で泣いてるの??」


真「····お前が····何でだよ·····何で·····何するためにここに来たんだよ!!!!」


「·········パパに答える必要ない。」


真「何でだよっ···連絡も···つかないしっ···あんな手紙1枚でもう会わないつもりだったのかよ···今どこに住んでるんだよっ···2年間····どうしてたんだよ!!!!」


パパの悲痛な思いが、心にのし掛かった。


「·····」


真「教えてくれよっ···身体が傷だらけって何だ···心愛に何があったんだよっ····」


「····泣かないで。」


真「ねぇ教えてって···何でパパは何もわからないんだよ···パパは··」


「知る必要がない。」


真「っ···何で···そんな突き放すんだよ!!!!心愛はそんな冷たいこと言う子じゃないだろ!?甘えん坊でいつも優しくてそれで···」


「もう昔とは違うの!!!!」


真「!!!」


「パパ達が知ってた私なんて····もうどこにもいない···死んだの···」


真「ここ··」


「もう関わっちゃいけない。これ以上踏み込まないで····」


真「どうして···??心愛はパパの大切な子なんだよ??··何でそんなこと言うんだよ···」


「····パパよく聞いて??」


しっかり目を合わせた。


「パパはこれから····とても大切な人と結婚して····子供が出来て····その子を···私以上に可愛がって···幸せにしてあげて····たくさんたくさん····愛してあげて····」


パパは、首を横に振っている。

その顔からは涙が溢れ出ている。

それを私の指で何度も掬った。


「····私の存在は····もう忘れるの····いつか時間が解決してくれる。パパには···支えてくれる人がここにたくさんいる。」


真「嫌だ·····嫌だそんなの嫌だ···」


「····」


俊「俺らだってそんなの嫌だ····堪えらんねーよ···お前自分がどれだけ大事にされてるのかわからないのか···??簡単に忘れられるような存在じゃねーんだぞ!?」


幸「そうだよっ····心愛より大事なものなんて俺らにはないよ!!!仮に真吾がまた結婚して子供が出来たって···そこに心愛がいないんじゃ幸せでも何でもないよ!!!」


「····時間が解決してくれる。」


修「···お前は平気なのか···??俺らと会えなくなっても平気なのかよ···」


「······何のために····2週間に1回を3ヶ月に1回にして、それをさらに延ばしてたと思ってるの??···平気とか平気じゃないとか····そんな話じゃないんだよ····私は元から····隠していたことがバレたら、もう会わないつもりだったよ。」


修「どうしてだ??」


「····ただ傷付いてほしくないだけ。それだけだよ····」


知らなくても良い事実を知った時、どうなるかなんてわかってる。