~心愛side~


季節は残暑の過ぎ去った秋、10月。


過ごしやすい季節になってきた。


そんな今日はパパとの面会日。


最近は、前に比べて会えなくなってしまった。


それは私の都合なんだけど····


こうして頻度を徐々に減らして、そろそろ·····




一等地に建つ大きなマンション。


その最上階ワンフロアがパパ達の部屋。


達っていうのは、パパのバンドのメンバーの早乙女俊樹、新城幸也、中富修一の3人。

この3人は、パパの家族。

幼い頃養護施設で苦楽を共にした4人は、肉親よりも深い繋がりを持っていて、今は同じ仕事をして一緒に暮らしている。

ただ、修ちゃんだけ本業はお医者さんで、THREEDAYSの体調管理は勿論、大学病院で働いてる。

だから、修ちゃんはコンサートの時とレコーディングの時しかドラムを叩かないんだって。



公園を抜けてマンションの前に来ると、マスコミがちらほらいた。

先週パパ達に熱愛報道が出たからかな。

裏口から入って、遠回りをした。

カードキーを当てて最上階までエレベーターで登る。

そして部屋の前に着くと、すぐ扉が開いた。


ガチャッ


ギューッ


真「心愛っ···会いたかったよ···」


シトラスと煙草の香りに包まれた。


「パパ····久し振り。」


真「····何ヵ月ぶりだと思ってんの····2週間に1回は必ずって····前も約束したじゃん···」


パパの切ない声にズキリと心が痛んだ。




俊「心愛、お前4ヶ月ぶりなんだけど···その前は3ヶ月も間が空いてた。」


「ごめんね??」


幸「謝って欲しいわけじゃないよ。ただ···俺ら不安なんだよ。心愛がいつか来なくなっちゃうんじゃないかって···」


ドキッ


「·····これ、お土産。ミルクティー大好きでしょ??だから買ってきたからの。朝ごはん食べたの??」


俊「いや、食ってない。」


「ちゃんと食べなきゃ。」


真「···心愛は食べてんの??会う度に痩せてるような気がするんだけど···」


「気のせいじゃないかな??それより修ちゃんは??」


真「あ、来たら起こしてって言われたんだった。」


俊「夜勤明けだよあいつ。」


「そっかぁ····起こさなくてもいいよ。可哀想だし····何か作るから待っててねぇ。」


今日で、あと何回来れるんだろう。

ママが再婚したことがバレたり、自分がしていることがバレたらもう来ないつもりだったけど、そんな様子はない。

あとは····


俊「ハァー···でっかい記事。」


幸「4人揃って撮られちゃったもんねぇ。」


真「張られてたんだな。」


「新しい彼女??」


真「んー···まぁそんなもんかな····」


「····いつもは違うって言うのに、今日は認めたね??」


真「否定したって信じてくれないくせに。パパが1番大切なのは心愛だよ。」


「····そっか····ねぇパパ·····幸せ??」


真「え??····うん···幸せだよ??どうしたの??そんなこと聞くなんて····」


「ううん。」


俊「心愛は幸せなのか??」


「···私は·····4人が幸せなら幸せ。」


私の1番大切な4人が、幸せでいてくれるならそれで良い。


真「····心愛、お前···」


「はい、サンドイッチ出来た。」


幸「美味しそう。心愛は食べたの??」


「うん···まぁね。」


俊「本当かよ??お前が食ってる所なんてここ何年も見たことねーぞ??ここに来ても飯の支度するだけでお前食わねーじゃん。」


「あんまりお腹減らないし、それに私年頃だよ??太りたくないでしょ。」


俊「お前3食ちゃんと食ってんだろうな??ダイエットなんかする必要ねーんだからな??十分すぎるぐらい痩せてるし、もっと太った方が良い。」


元々食事をちゃんと与えられてなかったのもあって、つい疎かにしてしまう。

今は1人だけど、1日何も食べなくても平気だし、本当最低限で良い。


真「心愛も食べよう??」


「私はいいよ。」


真「·····昔は····食べるの大好きだったじゃん。」


「·······いつの話してるのパパ??····そんなの····すっごい昔の話だよ。」


まだパパと一緒に暮らしてた、あの幸せだった頃····

そんな昔のことだよ····