修「心愛、このカード知らねー名前だけど···」


「えっ、そんな所まで見てるの!?駄目よ。」


修「誰だそれ。」


男の名前だった。


「·····」


修「心愛、俺には何でも話せ。言っちゃ駄目って言ったことは必ず守る。」


「····それは嫌だ。」


修「どうして??」


「修ちゃん····パパ達に内緒なんて苦しいでしょ??だから····前にカウンセリングもするって言ってたけど、他の人にしてもらうように頼んだから···」


モヤッ···


修「別に苦しくねーよ。お前が他の奴に頼む方が苦しい。」


なんかスゲー嫌だ。


「とにかく大丈夫だから。修ちゃんに話したことは、パパ達に伝えても大丈夫だよ。」


修「堕胎のことも??」


「····うん····でも、2、3日お見舞いは来なくて大丈夫って伝えて??毎日じゃ大変だよ。」


修「伝えてほしくないことは伝えない。」


「大丈夫。」


本当は嫌だなんてわかってる。

でもコイツは自分のことより俺の心を優先した。

1人で傷つくことも、抱える必要もないのに····




修「ただいま···」


気分が浮上しないまま帰宅した。

心愛と話して医局に戻ると、呼吸器の主治医は俺の名前になっていたが、精神的な面の主治医は他の医師に名前が変わっていた。

しかも俺より若い男····

いやそれは良いけど、心愛が他の奴の治療を受けるのは嫌だ。


真「おかえり。」


俊「先飲んでるぞー。」


幸「何飲むー??」


今日は酒が飲みたいと俺が言ったから準備をしてくれていたらしい。


修「なんか···スゲー強いのロック。」


幸「は??···どうしたの??ロックなんて俺らにやめろっていつも怒るくせに。」


修「飲まなきゃやってられねぇ。」


軽くシャワーを浴びてリビングに行けば、つまみやらが出来上がっていた。


「「「「お疲れー。」」」」


グラスを当て一口飲めば、喉が焼けるような感じがした。


修「ハァー····」


真「何かあったのか??」


修「心愛がさ····」


主治医が変わったこと、財布の中身のこと、麗華のこと····

そして····


修「····心愛が話して良いと言ったから話すけど······検査しててわかったんだけどな···」


真「うん??」


修「····心愛は一度堕胎してる。」


真「ダタイ···??」


意味が伝わっていないようだ。


修「····子供を堕ろしてる。」


「「「!!!!!」」」


修「······相手は····麗華の旦那だ····」


真「···何で····」


どうしてわかるんだと言いたいのか···


修「····レイプされて追い出されて、麗華にウリをするように言われたけど、最初は本番はしてなかったらしい。だから、相手はそいつしかありえないんだって···」


"堕胎してからピルを飲み始めて、本番もするようになったの。もうどうせ···汚いのに変わりはないから···"


あんな顔させたかったわけじゃない。

心愛は汚くなんてない。

澄んだ心を持った優しい子だ。

俺達を受け入れ始め、昔のような穏やかな心愛が少しずつ見受けられて、俺は凄く嬉しかった。

なのに、やっぱり過去は心愛を未だに傷付ける。


真「·····何で····心愛がそんなに傷つけられなきゃいけねーんだよ···」


修「自分は最低だって言ってた···心愛は何にも悪くない。でも、自分は最低だって毎日思ってるって···」


真「····」


修「本当は産もうと思ってたけど····可愛がってあげられないと思ったって····」


俊「間違った選択じゃねーよ···」


幸「····苦しかっただろうね····」


真「···俺病院に···」


修「2、3日···来ないでってさ···」


「「「!!!」」」


修「言われたくないことは言わないって言ったんだけど···それだと俺が苦しいだろうからって···」


幸「苦しいって何が??」


修「お前らに隠し事するのがだよ。」


幸「俺らはそういうの言わなくても伝わるから苦しいとかないんだけどなぁ···」


真「···俺病院行ってくる。」


修「······そうだな····俺らも行くか。今頃泣いてるかもしれない。」


俊「泣いてるな···そうだ、いろいろ買っていこうぜ。」


幸「俺まだ飲んでないから俺が運転してくよ
よ。コンビニで良い??」


俊「うん。」


修「真吾あのさ··」


真「ん??」


修「心愛に主治医の件話してくれねーか??」


真「良いけど···別に喘息は診てくれるんだろ??それは専門だけど精神的なものは専門じゃないって言ってたじゃん、負担になるし···」


修「嫌なんだよ。何か····モヤモヤする···」


真「ふーん···まぁ話しとく。」


修「頼むな。」


このモヤモヤの正体に気付くのに、もう少し。