~修一side~


真「寝ちゃったな···」


修「···夕方、心愛と2人で話したいことがあるから、お前ら帰れよ。」


真「何で??聞いちゃいけないのか??」


修「俺は家族だけど、医者だ。心愛は患者。守秘義務がある···心愛が良いと言ったことしか話さないつもりだし、その件について話しても良いのかどうか聞かなきゃいけない。」


真「····わかった····お前だけが頼りだから心愛のこと頼むな。」


修「あぁ···」


俺が出来ることは全てやってやる。





「んぅ····」


修「起きたか??」


「修ちゃん····」


修「····少し話したいことがあるんだけどな···」


「ん??」


クリクリした目をこちらに向けると、可愛さが増す。

こんなに可愛い、愛しいと思える女の子はたった1人しかいない。

この子は、心や身体に傷を負い、今もなお苦しんでいる。


修「全身検査したんだけどな、気になることがあって······お前····堕胎したことがあるのか??」


驚いた顔をしてすぐ、悲しそうな顔をした。


「·····ある····1回···」


やっぱり····

念のため婦人科での検査もしたら、医師からそう言われた。


「·····産もうと思ったけど···あの男の顔がちらついて····子供に罪はないけど····可愛がってあげられないと思って···っ···酷いことしちゃったって毎日···思ってる···」


あの男···


修「あの男ってまさか····」


「····うん·····前はね、ウリしてたけど本番はしたことなくて··だから····1人しかいないの····」


修「····」


「最低でしょ??」


自嘲気味に笑っているが、心愛は悪くない。

現実問題、誰かの協力なしでは子供は育てられない。

ましてや、父親は好きな男じゃない。


修「お前は最低なんかじゃない。最低なのは···いつだって男だ。」


「ううん···決めたのは私······堕胎して言われたの····もしかしたら2度と妊娠は出来ないかもしれないって····長年の暴力で、いろんな臓器が弱ってるって···」


修「どこで堕胎したんだ??」


「···闇医者。正規の所は未成年は同意書がいるし···」


修「それはちゃんと治療されてるのか確かめても良いか??それから、これから妊娠が可能かどうか。」


「調べなくて良い。私···そういう未来ないから····」


修「····1年後の話しか??」


「·····パパには言ってないんだけど····毎日ママからメールがくるの。」


修「見せて??」


心愛がスマホを差し出した。


"地獄に落としてやる。"

"次の誕生日に絶対殺す。"


「····期間限定になっちゃうんだけど····最後に···皆の傍にいたいって思ったの···修ちゃん、私は···治療はしない。無駄だし····」


修「俺らが守ってやるって言ってるだろ??お前だって納得したじゃねーか。」


「····私は心配なの。いつか皆が····こうやって刺されるかもしれないし、何かでっちあげられるかもしれない····それが私の命で解決するなら····」


修「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ。お前は寝てたからわかんねーかもしんねーけど····あいつら仕事も行かねーでずっとここにいたんだぞ。飲まず食わずで····真吾なんて気付いたら泣いてて····1回心臓が止まった時は、もう見てられないぐらい泣きじゃくって···俺の心臓使えってそれが駄目なら俺も死んでやるって····俺だって····」


失いたくない。


「もしママから何にもされなくなったとして····それでもこんな身体じゃ貰い手なんてないよ。私は一生結婚できない。」


修「んなことねぇ。心愛の全てを受け入れてくれる人は絶対いる。もしいなかったら俺が···」


俺が????

今何て言おうとしたんだ俺は。


「????何???」


修「いや····とにかく、諦めるな。治療もしっかりしよう。俺がこれから心愛の主治医を務める。」


「修ちゃんが??···闇医者···」


修「駄目だ。全身俺が管理するからな、覚悟しとけ。」


「お医者さんの修ちゃんは厳しいからなぁ。」


そう言ってコップの飲み物を飲んだ。


修「何か飲み物買ったのか??」


「水道水だよ。」


修「水道水!?!?やめろよお前、カルキもあるし、そんな身体に良くないぞ。」


「大丈夫だよ。節約しないといけないから。」


修「金やっぱりなかったのか···」


真吾が帰る前に気にしていた。

アパートで言ってたし、今お金がないのかもしれないって····


修「いくらあるんだ??見せてみろ。」


「大丈夫。」


修「大丈夫じゃない。」


「むぅ····はい。」


財布を渡され中を見ると···


修「····250円····」


よく見たら財布はブランドものだ。

心愛はこういうのが好きなのか···


修「···あれ····」


クレジットカードが何枚かある····

え、誰のだ??

知らねー名前···