強欲で、金に汚いあいつには早々から諦めていた。

感謝するところは心愛を産んでくれたことくらい。

その心愛を引き取らなかったのが、俺の人生最大の後悔だろう。

だって、引き取ってたら間違いなく今は年相応の暮らしをしていたし、幸せにしてあげれてた。

こんな傷付くことなんてなかった。


「···でも頑張らなきゃ暮らせない。」


真「パパと暮らそうよ。アルバイトもしなくて良いし、家にいてくれたら良い。高校に行きたいならちゃんも行かせてあげるし、何だってするよ。」


「····ううん····邪魔になるから····」


真「邪魔なんてない。」


「前言ったよ??パパは結婚して新しい家族を作ってほしいの。」


真「いらない。だって心愛がいなきゃ意味ない。」


「····鍵····返してくれるかな??もうここに来たらいけないよ。亮が情報を守ってくれてるだろうけど、バレたらえらいことになっちゃう。」


真「心愛、パパを突き放さないで。絶対ママから守ってあげる。心愛はパパを守らなくて良い。もう···これ以上1人で傷付くのはお仕舞いにしよう。」


「·····パパは·····わかってないよ。」


真「何を??」


「····とにかく関わったらいけない。」


硬い表情のまま、出掛けていった。

それから心愛は戻ってこなかった。



そうこうしてるうちに11月になっていた。

アパートに心愛が戻ることはなく、連絡もつかないと亮から言われた。

そろそろ焦りが出てきた今日、4人で雑誌の撮影があり移動していた。


真「···ハァー····」


心配で仕方ない。

でも心愛が何であそこまで突き放すのかわからない。

だから、相変わらずアパートで過ごしたりしていた。


俊「どうしてんだろうな····」


幸「わかんないね····」


修「あそこまで拒絶する何かがあるのか····」


谷「ほら撮影始まるから。何枚か撮ったら今日は終了だからな。」


修「外で撮影すんの久し振りだな。」


谷「あぁ、お前らにずーっと届いてた脅迫状、急にこなくなったらしいからな。」


ここ何年かきていた脅迫状、気にしていなかったが、先月から急にこなくなったらしい。


真「飽きたんじゃねーの??全く、こんな寒いと外も嫌だけど、たまには良いか。」


念には念を入れて、室内での撮影しかしなかったが、何年かぶりに外での撮影とあって息抜きになる。



あっという間に撮り終わり、今日は4人で心愛のアパートに行こうかと話しながら車に向かっていると、見たことのある男が近寄ってきた。


真「あれ····」


谷「ココちゃんの後見人の男だな···」


麗華の元彼で、会社役員の男。

後見人から外され俺が親権をとった。

前に会った時とは見た目が違って見えた。


俊「何か···ヤバくね??」


谷「早く車に··」


「うあぁぁぁぁぁ!!!!」


急に叫び声をあげてこちらに向かってきた。

男の手にはナイフが見える。


谷「真吾!!!!危ねぇ!!!」


咄嗟に動けず衝撃に備えて目を瞑った。

でも、いつになっても痛みはこない。

目を開けるとそこには····


真「···!!!!···心愛??」


両手を広げ、俺の前に立っていた。


俊「てめぇ!!!!」


俊樹が男を蹴っ飛ばした。


心愛が後ろに倒れそうになったのを抱き止めた。


真「···ナイフ····」


心愛の胸にナイフが刺さっている。


「ハァー····パ···パ····」


真「心愛!!!何でっ···」


修「心愛しっかりしろ!!!誰かタオル!!!」


「·····だから·····関わったら·····駄目って·····言った···のに····巻き····込んで·····ごめんね····怪我····してない···??」


真「もう喋るなっ··」


「····ハァー····ハァー····ママから····私が·····守って···あげるから····ね····ゴホッ····」


口から血が··

袖で何回拭いても流れてくる。


修「心愛しっかりしろ!!救急車すぐ来るからな!!!少し痛いけど我慢しろよ??傷を押さえてるだけだからな!!」


幸「心愛!!!しっかりして!!!」


「···ハァー····パパ·····大··好き····」


真「もう喋るなってわかったから!!!パパも大好きだから!!!心愛っ··」


「俊ちゃん···も····幸···ちゃんも···ハァー···修ちゃんも····皆·····大好き····だよ···」


俊「俺らも大好きだよ!!だから心愛目を瞑るな!!!起きてろ!!」


「ハァー···いつか·····また····生まれ変われる····なら·····今度は······皆と······暮らしたい····な····」


修「何言ってんだまだ死なねーし死なさねーぞ!!!生きて!!!俺らと暮らすぞ!!!!それで、お前のことドロドロに甘やかして、幸せにしてやる!!!」


「·····」


パタッ


真「心愛···心愛!!!!心愛!!!!何微笑んでるんだよ起きろよ!!!!何でっ俺を庇った!!!おい起きろ!!!」


修「心愛しっかりしろ!!!」



そこから記憶が飛んでいる。

気付いたら血だらけの手のまま手術室の前にいて····


「ご家族の方!!同じ血液型の方はいらっしゃいますか??!」


真「俺が同じです!!お願いです全部使って良いから!!娘を助けて下さいっ···」


俊「俺と幸ちゃんも同じだ、俺達の血も使って下さい!!!」


幸「どれだけでも良いから!!!!」


とにかく、助かってほしい···

暫くして、ランプが消えた。


修「ハァー·····手術は成功した。ただ出血が酷くて、だいぶ輸血した。拒否反応さえ起きなきゃ良いけど····」


真「お前が···手術したのか??」


修「そう言っただろ。俺は···自分以外の人間がして後悔なんてしたくないから。」


真「ありがと····ありがとっ···」


修「病室行ってやれ。特別室用意したから。」


俺達は言われるまま特別室に向かい、心愛が目覚める前に、やることを済ませた。