~真吾side~


「早く·····楽に····なりたいな·····そしたら·····もっと幸せ·······スー····スー····」


真「······っ······ズッ····」


心愛の幸せは、死ぬことなのか·····




あれから、心愛の行方がわからなくなった。

亮は、アパートに必ず帰るからと言って俺達に鍵を託した。


亮「多分ホテルにいると思うけど、着替えに帰るはずだから····俺達があんたらの情報操作をして見つからないようにしてやる。心愛のこと頼む。」


心愛は、良い仲間を持ったと思う。

コイツらがいなきゃ心愛はきっと駄目になってた。




それから毎日交代で朝から次の日の朝までアパートで過ごした。

今日が俺の当番だった。

心愛がやっと帰ってきた時、嬉しさが半端なかった。

すぐに俊樹達にグループLINEをして、亮達にも連絡をいれた。


俊[仕事終わったら行く。それか、お前連れて来いよ。]

修[診察したいから俺は病院早退して今からそっち行く。]

幸[うちのが良くない??]

修[幸也と俊樹は家で待ってろ。俺と真吾で心愛を連れて帰るから。]


真「修一来るのか···」


「スー····スー····」


よく眠ってるな····

亮に聞いたところ、1人ではまず眠れず、誰かがいれば1時間くらいならちゃんと眠れるらしい。

それでも足りずに何度か昼寝をさせてるって言ってた。

まとまった睡眠は勿論、食事も摂れないぐらい心が傷付いてるのに、本人は何ともないって顔してるもんな····


暫くして、修一がやってきた。


修「寝てんのか。」


真「あぁ···もう1時間以上経つ。随分深く寝てるみたいだ。」


修「安心できるんだろう。」


真「······だと良いけど·····」


修「飯は??」


真「いらないって····一昨日チョコレート食べてから何にも食べてないんだって···あんまりお金がないから、水道水飲んで凌いでるみたいだ····」


修「·····そうか·····」


真「······心愛がウトウトしながら言ってた···早く楽になりたいって····それが1番の幸せだって·····心愛は····もう限界だ····さっき後見人の件も話したし····思い詰めなきゃ良いけど、もし思い詰めたらきっと····」


修「····目を離さない方が良いかもな····」


真「あぁ····」


ただ一緒にいたいという願いが絶たれることだけは避けたい。




それから3時間で心愛が目を覚ました。


「んぅ·····」


シバシバと目を開け、目があった。

するとふにゃんとしたかわいい顔をして、俺の胸にグリグリとおでこを当てた。


「んぅぅ····」


「「かわいっ····」」


可愛さ爆発。


「···········あれ·····」


寝惚けていたのに、頭が冴えてきたようだ。


「今何時···??」


真「11時。」


「えっ···寝ちゃった···バイト行かなきゃ···」


バイト····

昼キャバか···


立ち上がると、フワリと倒れそうになった。


修「あぶなっ···おい心愛大丈夫か??」


「····うん····立ち眩み····」


修「診せて??」


「ううん、平気だよ···お水飲めば落ち着くから····」


真「ほら、これ水···」


心愛が眠ってる間に修一に水やお茶を買ってきてもらった。


「ううん····水道水で十分だから····」


頭を押さえたまま台所でコップに水を入れて飲んでいた。


「···ハァー····」


修「心愛、顔色悪いし休んだ方が良い。」


「大丈夫だよ。夜もお仕事あるし、明日は朝からの仕事もあるから···」


真「心愛、もう仕事は辞めよう。ママにお金なんて渡さなくて良い。パパがママに言ってやる。」


「何も言わないでっ····大丈夫だから、ママにちゃんとお金渡せる。もっと頑張るから···」


真「頑張らなくて良い。心愛はもう十分頑張ってる。」


「平気だよ??まだ頑張れる、だからママに言わないで···」


怖がっているのか、俺の腕を掴んだ心愛の手は震えていた。


修「心愛、大丈夫だから落ち着こう。」


「ママに言ったら···きっと怒って····パパが嫌な思いしちゃう···」


真「パパは大丈夫だよ。嫌な思いなんてしない。パパは心愛がこんな頑張ってる方が嫌だな。」


「·····何で??」


不思議そうな顔をしている。


真「心愛が大切だから。それに、パパ強いからママに負けないし。確かに芸能界ではママのが先輩だけど、パパのが力あるよ??」


麗華は俺より10歳年上だ。

俺と麗華はそもそも一夜の相手で、デビューして早々に人気に出た俺をつまみ食いするくらいのつもりだったんだろう。

それが子供が出来て好きでもないのに結婚した。

そこに後悔はない。

むしろ産んでくれと頼んだのは俺の方だったし、これから麗華のことも好きになれるかもと思ってた。

無理だったけど。