~心愛side~


あれから、倉庫にも行かず、ただアルバイトと夜のお仕事の往復をしていて、プライベートのスマホも電源を切ったまま。

アパートにも帰っていない。

ホテルにそのまま滞在して、コンビニに行っての連続。

でも1週間も経つとアパートに帰らなきゃ服が困ってきた。

午前中なら皆倉庫だし、良いよね。

そう思って戻った。



「えっと····何してるの···??」


真「何って、テレビ見てる。」


「····鍵は??」


真「亮から貰った。」


「·····そう····じゃあ返してくれる??」


真「飯食ったか??パパはサンドイッチ食べたんだけど、心愛のもあるよ。幸ちゃんが作ってくれたんだよ。」


「ううん、いらない。」


真「1口も??うまいよ??」


「いらないから、食べて良いよ。お仕事は??」


真「休み。」


「こんなところにいたら見つかるから、家に帰った方が良いよ。」


真「あ、そうだ冷蔵庫にプリン入ってるぞ。食べるか??」


「····」


あんまり会話が成立しないなぁ···

とりあえず着替えよう。

そして鞄に服を詰め込んだ。


真「心愛····パパ、心愛のこと公表することにしたから。」


「!!!」


え???


真「ママと結婚してたことも、心愛が産まれたことも···離婚したことも····これから一緒に住むって公表する。」


「····住まないけど····」


真「あと、弁護士に話したら後見人のことで動いてくれることになった。親権はパパに移ると思うから。」


「そんな勝手に···」


真「····パパは····心愛のためなら何だってするよ。心愛と一緒に暮らすことが夢だから····それが叶うように勝手に動くことにした。」


「·····パパは····私がいたら幸せになれないよ。」


真「なれるよ。」


「なれないよ、ママが言ってたもん···」


真「心愛。」


パパが目の前に立って、私の両頬を手の平で包んだ。


真「心愛はパパの宝物だよ。」


「·····」


真「····ママの言うことは信じるのに、パパの言うことは信じられない??」


「·····」


真「洗脳みたいなもんかな····悔しい····パパは本当····悔しいよ。」


「····どうして??」


真「···信じてもらえないから···ごめんね心愛···1人で心を削ってきて····もう削るところもないくらいなのに···」


「····平気だよ。」


真「平気じゃないよ。心愛、気付いてあげて····心愛の心は悲鳴をあげてる。」


私の心が??

そんなことないけど····


真「···おいで。」


床に座ったパパが両手を広げた。

その目の前に座ると、


真「違うよ、ここ。」


胡座をかいた足を指差した。


「乗るの??」


真「うん。」


そこに背中を向けて座ると、物凄い安心感に包まれた。


「····」


眠い···

頭を規則正しく撫でられ、シトラスと煙草の香りが心地良い。


真「····もっと体重かけて良いよ。」


「重いから···」


真「軽いよ。軽すぎ····昨日何食べた??」


「····何にも食べてない····」


真「····一昨日は??」


「·····チョコレート····1つだけ食べた···」


真「····今日は??」


「お腹減らない···」


真「水分は摂ってるか??」


「うん····水道水····ホテルで飲んだ····」


真「水道水??」


「···タダだから···」


眠たい····

でもパパが話しかけてくるから、あまり考えることなく返してる。

夢うつつってこれかな····

気持ちい····


真「お茶とか飲まないのか??心愛の好きなピーチティーは??」


「···今月は····お金ないから···無駄遣い出来ない···」


ペットボトル1本だって、積み重なれば大きい。

自分の好きなものは、お金がちゃんと入った時だけ。

それと···


「ご褒美は····パパ達に会った日だけ····その日は····全部お休みだから····幸せ····」


毎日毎日働き詰めで、疲れないわけじゃない。

たくさんこなさないといけない日は、顔は引き攣るし、胃が痛くなる。

それでも頑張らなきゃお金にはならないから····