涙を拭きながらカナは黙って話しを聞く。


「それに、いい恋愛をしたと思うよ。

 カナ、すごく良い表情になったもん」

「・・・そうかな?」
鼻をすすりながら、カナはマスターを見る
「そうだよ」
にこっとマスターが笑いかけ、
甘めのカクテルを差し出した。



「でも、やっぱり辛い・・・。辛いよ」

カクテルに口をつけずに、言葉を漏らす。

「高科さんも辛いと思うよ。カナ。

男としての責任があるから、家族と家庭は絶対守りたい。

でも、オトコの部分でカナに惹かれた。

・・・どうしようもなく、どうしていいかもわからず、
カナに惹かれたんだよ」



マスターのグラスを磨く手をカナは漠然と見ていた