カナの中で決心をしなければならない時がきた。



いや、結論が出てしまった。




でも、その事実を、現実を、受け止めたくなかった。




カナは心を押し潰されそうだった。


カナは知らず知らずにバーに向かった。




誰かに背中を押してもらいたかったのかもしれない。

「カナぁ、久しぶりじゃん・・・って、どうした?」

平日のバーはお客もおらず、マスターと二人きりだった。

そこで、カナは、簡単に今までの高科との出来事を話し、

奥さんを、産まれてくる新しい命を目の当たりにして
出てしまった結論を、洗いざらい喋った。


最後まで話したところで、カナは涙をこぼした。



ティッシュを渡しながら、マスターは静かに話し出した

「カナ、カナは間違ってないよ。

今のカナにとっては、辛い結論だろうと思うけど、
5年後、10年後を考えてごらん?
 
正しい判断だと思うよ。」