「…ッ‼︎」

「文教地区で、住みやすい所だけどね。
…でも。
それだけじゃなかったんだ。
…だよね?」

「……。」

「少しでも、近くに居たかった?」

……はぁ。
完全にバレたな。

「決意表明のようなものです。」

「決意表明?」

「絶対にまこちゃんから取り戻してやるって。
だから、近くにいるんだって。
それに、よりを戻せて、愛も職場がこれだけ近くなら、喜んで一緒に住んでくれるかもしれないって。」

「フッ…。
そりゃ、優しい心遣いだ。
……俺は、聞いてもいいんだろうか。」

「…いずれ、話さなくては、と思っていました。
俺、再会したら本気で動こうと思ってます。」

決意を新たに告げる。

「いつから?
美央も知らないんだよね?」

「……高3の、11月ミサの時からです。
俺と愛が出会ったのは…………」






それから始業時間までの1時間、俺は愛との出会いから別れまでを斎さんに話した。

斎さんは、殆ど口を挟まず、時折考え込むように机を見ていた。
その頃の愛を思い出そうとしているのだろうか。



「…本当に、知らなかった。
多分、俺達…俺と美央は、1番近くに居たのに
気付いてやれなかったんだ。
あの頃の俺達は、やっと美央が大学生になって…
その…色々と解禁になった事があってね。
自分達のことで、舞い上がってた。
他に何も見えてなかったんだ。」