全体の七割以上を占めているそれは、立ち読みでは終わりそうにない文量だった。

予想以上の長さに怖気づき、帰ってからじっくり読もうと、パラパラと先にページを進めた。

続いて、田辺くんの作品たち。

なんだか小難しそうな随筆と詩と短編だった。

「ふふ。田辺くんっぽい」

次のページを開いて、ドキリとする。

そこに載っていたのは、私が夏休みに書いたあのエッセイだった。

自分の中に眠っていた唯一無二の思い出が、こうして文印字されているのを見ると、不思議な気がした。

誰かがこれを読むのかと思うと、恥ずかしいけどうれしい。

指先で、自分で紡いだ文字を辿る。

思いは、言葉は、こうして外に放つことができるのだと、改めて胸が震えた。

これを読んだ誰かが、また新しい思いを抱く。

それはまた別の思いとなって、他の誰かの目に届くかもしれない。

文字が生み出す、永遠の連鎖だ。それはとても壮大で、尊いことのような気がした。

「あれ……?」

私のエッセイが終わった次のページは、背表紙になっていた。

桜人のは?と違和感を覚えながらページを捲ると、わずか半ページに、短い詩があった。

昨年と同じく、名前もタイトルもない。

だけど、それが桜人の作品だということは、すぐに分かった。