「すまん、エイミー。この馬鹿を捕まえてきたからわからない問題を教えてくれ」

部屋に戻ると、黙々とブラウンの肩ほどの髪をした眼鏡をかけた女子生徒がいる。名前はエイミー・モーガン。俺とエルヴィンの友達だ。

「ここ、わからない……」

エイミーが問題集を指差し、言う。明日は魔法史のテストなんだよな。歴史は前世でも苦手だったから、魔法史なんてさっぱり。

「ここの問題は、法律の作られた流れを覚えておくといいかもしれない。今の国王が誰かは知ってるよな、アルミン」

解説をしているエルヴィンが、何故かエイミーではなく俺に訊ねる。俺は問題集を開きながら、「ルイス・ヘスティア・アラスカ国王陛下だろ」と答えた。これくらい知ってて当たり前だろ!

「そうだ。そのルイス国王の父にあたる人物がこの法律を作った。……異世界から来た者、または異世界での前世の記憶を持つ者を投獄し、監視下に置くと」

ドクン、と俺の心臓が嫌な音を立てる。俺はこの世界に転生した時、この世界にある法律を神様から聞かされていた。だから、家族はもちろん、エルヴィンやエイミーにも前世のことは話していない。