結局、その日は担当が変わることをなつに伝えられなくて、次の日になってしまった。

朝の回診の時に伝える予定だ。

医局で瀬川と合流してなつの病室に向かう。

「なつちゃん、だいぶ落ち込んでますよね…」

「…そうだな。落ち込んでる、というよりはショックを受けてるっていう表現が正しいかも。なつは、治療の辛さを誰よりも知ってるから。」

また溜息をつきそうになって、すんでのところで口を閉じた。



コンコンッ

「なつ、入るよ」

病室の入口のカーテンを開けて中に入る。

返事がないな、と思っていたら案の定なつはまだ寝ていた。

少し目元が赤く腫れていて、夜遅くまで泣いていたのかな…と推測する。

まだ眠っているところを起こすのは心苦しいが、起きてもらわないと診察も出来ないので仕方なく肩を叩く。

「なつ、おはよー。もう朝だよ。」

数回声をかけてやると、なつはゆっくり瞼を上げて瞬きをする。

「おはよう」

「……ん、おはよぅ…」

なつはやっぱりまだ眠そうで、うつらうつらとまた眠りそうになっている。

「眠いとこごめんね、とりあえず診察だけさせて。」

そう言うと、なつは寝ぼけた表情のままこくんと頷く。

手で温めておいたチェストピースを持ち、イヤーピースを耳にはめる。

なつは診察の流れが大方分かっているから、言わなくても自分で服を持ち上げてくれる。