服や荷物をしまい終わり、なつもそっとしておいた方がいいかな、と思い病室を出ようとなつに声をかける。

「なつ、俺、もうそろそろいくね。何かあったらナースコール押すんだよ。」

そう言うと、なつはゆっくり振り向いて俺の白衣の裾を掴んだ。

「………やだ、いかないで。…ひろくん、だっこ……」

そう泣きそうな顔で言うもんだから、俺は何も考えずに頷いた。

相変わらず軽いけど、出会った頃と比べるとだいぶ重くなって成長を感じる。

心は幼くても、体は成長を続けるから。

なつの背中をいつもみたいにゆっくりさすってやると、しばらくして、すすり泣く声が聞こえてきた。

なつのくせに、強がっちゃって…

ほんとはさっきから、いっぱい泣きたかったんだろうな。

「…大丈夫だよ。たくさん、泣いていいからな。」

そう言って、あやし続けるとなつの泣く声は次第に大きくなっていく。

「……ヒック…エグ………う、うわああああああああ」

悲痛な泣き声が胸を突き刺す。

「よしよし、怖いよな、苦しいよな…、いっぱい泣いていいから、今は泣けるだけ泣いていいから。」

きっと、この後、泣く元気も無くなるような毎日が待ってる。

それはなつにとってとても辛く苦しいものだろう。

だから、今は好きなだけ泣いて欲しいんだ。

嫌な気持ちを沢山吐き出して欲しい。

なつをあやしながら、俺は声をかけ続けた。