そのまま入院となったなつの手を引いて病室に連れていく。

なつの顔からは表情が抜け落ちていた。

…いやな仕事だな……

大切な人のためとはいえ、自分の手で大切な人を苦しめなければならない。

今回も、最後まで俺が治療にあたっていたら、と思うと怖くなる。

途中で折れてしまっていたんじゃないかって思う。

俺は弱いから逃げた。

言い訳になってしまうけど、弱いままなつと接するよりかはましな選択だと思ったんだ。

俺がもっと強ければ、腕が良ければ今回もなつのことを責任もって治療にあたれたかもしれない。

少し…いや、めちゃめちゃ悔しかった。

でも、今回はその分なつの心のケアに回るって決めたから。

誰よりも、なつをわかってあげられるように。




病室について、施設の方から受け取ったなつの荷物を棚にしまっていく。

なつは、ベッドに腰をかけて窓の方を向いて足をプラプラさせていた。

「なつ、パジャマと下着ここにしまっておくからね。病着は…あんまり着たくないでしょ?一応入れておくけど、無くなったら看護師さんに言ってね。」

「うん」

いつものなつと違う小さくか細い声。

また胸が痛くなる。

なつの目はずっと窓の外に向けられていて、遠くを見つめているようだった。