その言葉通り、ジークはもうエイミを避けることはなくなった。ふたりは少しずつ仲良くなっていった。エイミは村にいた時とは別人のように明るくなり、笑顔も増えた。

「ああやって笑ってると、別に気味悪くないな。見慣れただけか?」

 にこにこと楽しそうにジークと会話をするエイミを見て、ナットは言った。リーズもうんうんと頷く。

「可愛くなったよね、エイミ。やっぱり恋は女を変えるのね~」
「こい~?」
「ふふ。気がつかないなんて、ナットは子供ねぇ」

 リーズはお姉さんぶって、ふふんと鼻で笑った。

 ある日の夕食でのこと。

「お疲れさん。今夜のメインは小鹿のローストだよ。それに野菜のスープ」

 ふくふくしい丸顔をしたトマス爺が、厨房からエイミに声をかけた。

「ありがとうございます! わぁ、いい匂い。なんて贅沢」

 エイミはうっとりした顔で答えた。

「今日の料理は自信作だ。あとで感想を教えてくれ」
「はい!」

 いやしいかもしれないが……貧しい村で育ったエイミには、トマス爺の作る食事は三食すべてがご馳走だった。

 今夜の鹿肉料理も絶品だ。舌の上で、肉がとろけていくようだった。