「どういう意味でしょうか?」
「どういう意味だ?」

 またまた声が重なる。焦った様子で、先に口を開いたのはジークだった。

「いや。エイミはあまり俺を怖がらないから調子に乗って、最初はあれこれと話をしてしまったが……やはり俺と話すなど若い娘は嫌だろうと思ってな。極力、お前の目に入らないよう気をつけていたつもりだったが、やはりダメか。三つ子はエイミに懐いているから、長く勤めてほしかったのだがな……」

 ジークは残念そうに肩を落とした。それに驚いたのはエイミのほうだ。

「えぇ? なにも嫌なんかじゃありません! 私は、私が気味悪いのでジーク様は不愉快なのだろうと……そう思っていました。最初は気を遣って笑いかけてくださったのだと」

 ジークが首をひねった。

「気味悪くも、不愉快でもないぞ。エイミが話をしてくれて嬉しかったし、できることなら、ずっとここにいて欲しいと思っている」
「そ、そうなのですか? では、私はここで働き続けてもよろしいのでしょうか」
「もちろんだ。これからも、よろしく頼む」

 ほっと安堵するとともに、エイミの全身から力が抜けていく。さらに、彼女の黒い瞳からぽろりと涙がこぼれた。
 他の場所へ奉公になどと強がったことを考えてはいたが、本当は不安だった。どこへ行っても、嫌われて厄介者扱いされるのは目に見えているから。
 この城以上にエイミに優しい場所は、どこを探してもきっと見つからないだろう。