こうして始まったエイミの新生活は、悪くないものだった。エイミの担当は掃除と子守りだ。

 城は広いので掃除は大変だが、毎日全ての部屋をする必要はないとリーズが教えてくれた。そもそも部屋は余りまくっていて、使ってない部屋がほとんどなのだという。

 三つ子はすっかり懐いてくれて、とても可愛い。しっかり者のリーズはエイミにも親切で、細々したこともなんでも教えてくれる。
 アンジェラとナットには気味悪がられている、もしくは嫌われている? ようだけど、これから少しずつ仲良くなろうとエイミにしては前向きなことを考えていた。

 唯一気になることと言えば、主であるジークの態度だった。

 最初はただ多忙なのだろうと思っていたのだが……。

 「あっ、ジーク様! おはようございます」

 朝、エイミが階段を掃除しているとジークが二階から降りてきた。
 すぐに気がついたエイミが挨拶をしたが、ジークはエイミから顔を背けたまま「あぁ」と短く返すだけだ。
 
 食事も食堂で顔を合わせないように、意図的に時間をずらされているような気がする。

(やっぱり、嫌われてる……のよね?)

 心当たりは、ありすぎるくらいだった。というより、嫌われる理由しかないだろう。田舎者の平民で、気味の悪い黒髪の持ち主で、勝手に部屋に侵入したあげくお爺さんと間違えてしまったのだから。

 人に嫌われるのなんて、エイミにとっては標準仕様で慣れっこのはずなのに……ジークに嫌われているという事実は、エイミの胸をやけに締めつけた。

(ちょっと笑ってくれたからって、仲良くしてもらえるかもなんて、なにを思いあがっていたんだろう)