ジークの体力を根こそぎ奪った三つ子達はいまだにエイミの足元で、すやすやと寝息をたてていた。
 それを見たアルがつぶやく。

「それにしても、ゾフィー婆やしかダメだった三つ子が烏ちゃんには懐いたのか……奇跡だな」
「うむ、この娘は熟練の子守り技術の持ち主だ。ぜひ、教えをこいたい」

 ジークはおおげさにエイミを褒め称えた。

「いえいえ。熟練なんて、そんなたいそうなものじゃ! 下に兄弟が多かっただけです。それに、本来ならそろそろ自分で子どもを産んでなきゃいけない歳なのに、すっかり行き遅れちゃって……いや、遅れても嫁げるのならいいんですけど、私の場合は……」

 自虐モードに入ってしまったエイミは、ジークのきょとんとした視線に気がつき、はっとする。

(しまった。こういうウジウジしたところが余計に鬱陶しいと村のみんなにも言われていたのに)

 黒髪のせいか、生来の性格なのか、エイミは必要以上に自分を貶めてしまう癖があった。そして、それが皆から疎まれる原因のひとつでもあった。

「行き遅れ? 俺もアルもお前より歳上だが、伴侶はいないぞ。トマス爺も独り身を貫いてるし、この城の人間はみんな行き遅れてるから、なにも気にすることはない」

 ジークはいたって真面目な顔でそんなことを言った。
 フォローとかではなく、本気でそう思っているようだ。