誰かの話す声が聞こえたような気がして、エイミはふと目を覚ました。ジークとお喋りをしていたはずなのに、自分だけ先に眠ってしまったようだ。隣を見ると、そこにいたはずの彼の姿はない。
 ジークがどこへ行ったのかはすぐにわかった。部屋の隅で、エイミの母親となにやら話をしているようだ。

(お母さん? 起きてたの?)

 盗み聞きをする気はなくとも、狭い家だ。じっと耳をすましていれば、ふたりの話はすべて丸聞こえだ。
 
「断る」

 短く言い切ったジークの声には、怒りが滲んでいた。