彼らは村長の声で、はじかれたように動き出した。慌ててその場に跪き、ジークとエイミにこうべを垂れる。

「ほんとに、ほんとにエイミだわ」
「結婚? あの子が?」
「ゾーイの夢じゃなかったの?」

 そんなささやき声がエイミの耳にも届いた。

(そりゃあ、驚くよね。きっとみんな、私は死んだものと思ってたはずだもの)

 エイミ自身だって、この村を出る時には死を覚悟していたのだから。
 領主様の隣に立ち、村のみんなに跪かれているなんてシチュエーションは、エイミ自身もまったく想像していなかったことだ。

「村長もみなも顔をあげてくれ。急にたずねてくたのはこちらのほうだ。そんなにかしこまる必要はない」

 ジークはそう言って彼なりの精一杯の笑顔を向けたが、村人達はより一層恐縮し身体を小さくするばかりだ。

「あっ」

 村人達の群れのなかから家族の姿を見つけて、エイミは思わず声をあげた。父と母と、兄弟達だった。

「家族か?」
「はい」

 ジークに問われ、小さく頷いた。ジークはゆっくりと村人達のほうへと歩み寄る。そして、エイミの家族の前で足を止めた。