「私達は血の繋がりはないけどね。あ、もちろん三つ子は除いてね」

 リーズが言う。たしかに、彼らはあまり似てはいなかった。

「あ、そうなのですか?」
「うん。私達はみんな孤児だったの。私は十年前のゴゥト王国との戦争で親を亡くした。三つ子は昨年の飢饉でね」

「ジーク様は領内の孤児を引き取って養子にしているんだ。だから、兄弟はこれからも増えていくだろうね」

 アルが誇らしげに、そう説明する。

 エイミは尊敬の眼差しを、ジークに向けた。

「ノービルドの領主様がこんなにご立派な方だとは、ちっとも知りませんでした。噂とは大違いなんですね」

 照れくさいのか、黙りこくってしまったジークにかわり、アルが答える。

「そうだね。ジーク様は女嫌いだから、わざわざ女を攫ってきたりしないよ。戦争以外の場面で人を殺したこともないし、なんなら虫を殺すのもためらってるくらいだね」
「雇われた女性がみ~んな出ていってしまうのは事実だけど、それはアルがいじめるからだしね」

 リーズがつけ加える。どうやらアルは、エイミ以外の女性にも平等に厳しいようだ。

「人聞きの悪いことを……僕は相応の能力の人間を雇いたいだけさ」

 アルは悪びれるふうもない。
 エイミはジークへ視線を向ける。

「あの、なんで噂を訂正しないのですか? うちの村では、公爵様はとても酷い人だって、みんな信じ込んてでいます」

 だからこそ、エイミがここに送りこまれたのだ。残虐公爵でなければ、エイミよりも美しくて、賢い娘を送っただろうに。