どこをどう走ったのかも分からないでようやく停まった車から降りたとき、外はもう真っ暗だった。

目の前に建っていたのは駐車場付きのデザインチックな一軒家。積み木を重ねたみたいな。周囲を見渡してもいたって普通の分譲住宅地に見える。

玄関ドアがガラス張りで、ポーチにステンレス製のシンプルなウエルカムボードが。小暮先輩は躊躇なくドアハンドルに手をかけ私を連れて中に入る。と。そこは小さなレストランだった。

店内はオーク系色に統一されていて、高級感もあり落ち着いた雰囲気。華美な装飾もなくリトグラフの絵が数枚、壁にかけられている程度。カウンター席だけの個室的な空間でも窮屈な印象がないのは、天井が吹き抜けになっているからだろう。

白のコック帽を被ったシェフがカウンターを挟んで「いらっしゃいませ」と丁寧に迎えてくれ、4席しかない右から2席を手で指し示す。

何もオーダーしていないのに、奥から出てきたロングエプロン姿の女性が、お箸と箸置きがセッティングされてあった板目のランチマットの上に前菜の盛り合わせを並べてさがった。

今日の今日で予約できるとは思えないし、私の都合って頭にあったのか無かったのか。恐る恐る隣りの席を見上げれば目が合い、したり顔で笑まれる。

「気に入りしか連れてこない店だ。自惚れていいぞイトコ」



あなたが何か言うごとに心臓が。おかしくなります、・・・先輩。