「イトコ」

ふと意識が醒まされた。鍛えてあって見た目より硬い肉付きの体に寄りかかったまま、どのくらい眠ってたんだろう。慌てて体勢を戻し隣を見上げる。

「ごめんなさい、つい・・・!」

「もう少し寝かせてやりたかったんだが悪いな」

薄く口角を上げた幹さんがやっぱり頭を軽く撫で、天辺にキスを落とす。

どこに着いたのかとガラス越しに目を凝らす。車はエンジンを切らずに薄明るい場所に停まっていた。他に音はなく、何かの広い建物の中で少なくても闇空の下じゃないことは察した。

「幹さんここは・・・?」

巡らせた視線を戻すと夜よりも深い色の眼差しが私を見つめる。

「今は使ってない会社の倉庫だ」

倉庫?

「男の話を付けると言わなかったか。筒井尊を呼んである、・・・もうすぐ来るぞ」

筒井君を?!息を呑んで目を見張った。

意味は理解できていた。だけど。心の準備がなに一つできてなかった。どうして今日なんですか。ホワイトデーを選んだあなたが、私の知っているあなたじゃない気さえする。