「糸子から誘われるのって珍しくない?」

「そうかな・・・?」

「なーに?彼氏の悩み?何でも言ってよ、訊くからー」

向かい側でエナはジョッキを片手にニンマリしている。

いつもの居酒屋は金曜日に来るとかなり賑やかだけど、それ以外の平日はそれほどでもない。空きテーブルがまだ目立つ中、ジュースみたいなカクテルを喉に流して思い切った。

「あのね。・・・会社を辞めようと思って」

アイメイクをしてもしてなくても、くりっとした瞳がさらに丸くなり、艶やかなリップが乗った半開きの唇は呼吸も忘れてるんじゃないかってくらい、微動だにしなくなった彼女。

「課長には昨日話して、エナにも言わないとって思ったから・・・」

「・・・・・・なんで。いきなり?」

やがて詰めていた息と一緒に言葉を吐き出し、私をじっと見据える。