「・・・・・・・・・私、」

言いかけたのを塞いだのは幹さんだった。

さっきまでのとは違う愛撫のようなキス。顎の下に指がかかり、角度をコントロールされては啄まれる。喉元まで出かかっていた“答え”がゆるゆると胸の奥へと引っ込み、中毒のように頭の芯が痺れ、溶かされていく。



やがて抜け殻になった躰はアパートに着くまで、幹さんの腕の中でしな垂れていただけだった。

「部屋まで送ってやる」

思えば初めてだった、幹さんも一緒に車を降りたのは。荷物入りの手提げ袋をさり気なく私の手から取り上げ、後ろからゆっくり階段をのぼる靴音が響く。

脇の外壁に『205』の表札プレートが付いた玄関ドアの鍵を回し、中に招き入れた途端。背中からきつく抱き竦められていた。

「・・・俺を好きか」

低い声が頭の天辺に埋まって聞こえた。