「いってきます。」
笑顔で言った。
ニセでは無くホンモノで。
春待っててね。
高校にもパパ達にも事情を説明した。
私はこの町を出て春を探しに行く。
どこに居たって私は春をさがす。
そして、何度も春に恋をするんだ。
たとえ、嫌われても避けられても。
何を思われたって私はあなただけなの。
まずは、春の家。
そこに行くしかない。
あぁ、いつも歩いて通ってた。春の家に。
その頃、春にも私が極道の娘であることは秘密にした。
帰りも「パパが迎えにくる」と言って春には家を教えなかった。
だって怖かったんだもん。
信用してない訳じゃないの。
でも、勇気がなかった。ごめんね。春。
ココだ。変わってない。
少し古くなったような感じだけど。
あの頃と同じアパートだ。
鍵はしまっているよね?
春はココには居なそうだ。
でも、何かわかるならっ。と思ったの。
実は...。
ドアノブにはりがねを差し込み、開けていく。
開いた!!
こういう事も出来るのだ。
ごめんね、春。お邪魔します。
静かにそう呟いた。
真っ暗だ。
「裏切られた」
春が言っていた。そして、
「殺したいほど憎くなった。」
まさにこの部屋が物語って居る気がした。
必要最低限しか置かない家具。
カーテンを閉め人の出入りも少ないのかとても...なんて言うんだろう?
不気味。それが合っているかも知れない、
ごめんね...。ごめんっ、春。
1人にさして、1人にしてしまってごめんね。
春はこの部屋でずっとずっと1人だったんだね。
机の上には1枚の写真が置いてあった。
「っっ。」
春と私の写真。
傷1つない大事にしてたんだ、きっと。
おそらく、ここに1回は戻ったはず。
それか、私達の今住んでいる市の家?
場所は確定しないけど何となくなら分かる。
でも、その可能性は低いだろう。
どっちらかが大事と言えば、私との思い出が詰まったこの家。
そうだと直感した。
理由は簡単。
私が春だったらそうする。
私達は似た者同士。
お互いがお互いを求めてる。
私は春が全てなんだ。春がいない世界はありえないの。
春もそうだろう。私に毎日「好きだよ。」って言ってくれた。
だから、私達の思い出が強いこの場所にはかえってきてる。
でも、家に帰ってきてその次はどこに行ったの?
外国には行ってないよね?
日本にいるはず。日本と言っても広すぎる。
どう探せばいいか分からない。
でも、この空。この夜空を見ている。
同じ夜空を。
春はどこにいるの?
私の事は気にしなくていいんだよ?
「殺したい」って憎むほど、私のせいであなたは追い詰められた。
私が悪いのよ。だから、自分を責めないで。
そうだ!ここに帰ってきてるなら、この辺で見かけた人がいるはず。
1日も私は病院にいた。
春はその間にどこかに行った。
1日と言う短い時間に思われるがその短いじかんでさえ、無くなると探すのが困難になる。
おそらく、夜にここに来た。
あの時は夕方にでていったから。
この市の族なら何か分かるかもしれない。
今日の朝出ていって、倉庫のみんなに言われたのを思い出した。
「待ってます。」と。
実は「協力する。」とも言われた。
本当に優しいね。良い人すぎるよ...。
「もしもし、歩夢?」
私は歩夢に電話をかけた。
助けて欲しいと。
「X市の春の住んでいる周辺の族とその場所の特定をして欲しいの。お願いできる?」
こんなに頼っていいか、やっぱり今だに分からない。
でも、頼ってくれ。
その言葉を私は信じる。