これも"春探し"
懐かしい。昔はずっと"春探し"をしてたなあ。
結局見つからなくて、奇跡的に会う形になったけど。
「春どこ...」
もう居ない。どこ行ったんだろう。
うん?なんか声が聞こえる...?気がする。
私は気配を消し物音を立てずに近寄ってみた。
『・・・きらきら・・ひかるお空の星よ~』
春だ!やっと見つけた。
それよりこの歌懐かしいなぁ。
私達が昔よく歌ってた"きらきら星"だ。
春の声。春の歌。やっぱり好きだなぁ。
私は少しの間、聞いておくことにした。
春side
俺の日常は"あの日"から急激に変わり始めた。
あの日とは花と離れることを決めた日。
花と会わなくなった日。
俺はこの一年半がとても殺風景になった。
星を見ている時、俺の中で星が色を失ったようになった。
その時、思ったんだ。
これは花と見ていたから綺麗な星が見れていたんだ。って。
俺の中で花がいることは当たり前になっていたんだ。
たとえ昔みたいに手を繋いだり、キスをしたりしなくても。
あの高校に転校して、花と話すことだけでも幸せだった。
でも、俺はその"幸せ"をこの手で手放したんだ。
いや、手放すしか俺の心は許さなかった。
俺自身がっ・・・。
「ねぇ、この後遊ばな~い?」
普通に街を歩いてた。
そしたら2人の女が俺に声をかけてきた。
「失せろっ・・・」
近づくな...。
香水くさい。笑顔も胡散臭い。
花はもっといい匂いで笑顔が可愛かったな...。
花はっ・・・。
「いいじゃな~い。」
懲りないな、この女ども。
「俺はお前らと遊ぶつもりは無い。これで最後だ。・・・俺の前から消えろ。」
少し殺気を出す。
「わ、わ、分かったわよ。行こっ?」
慌てて女どもは走ってどこかへと行った。
俺にとって花はかけがえのない存在だったと改めて気づく。
もう会うつもりはないがな。
俺はもう花を傷つけない。
今夜も星を見る。
「また、色なしか・・・。」
でも、俺は星を見る。見続ける。
だって花も同じ星を見てる気がするから。
花も星が好きだし、よく見てそうだな。
寝る前とか...。
好きな人と同じ星を見れるって最高だと思わないか?
まぁ、俺の場合は色なしだけど。
そして、星を見ている時に必ずしていること。
"花が幸せでありますように"
"花が笑顔でいますように"
すべて花に関しての願い事。
俺自身のはしたことが無い。
だから・・・
"花に俺の罪を許して貰えますように"
"また一緒に居られますよに"
そんなことは願わない。いや、願えないのか。
俺の心は花という光を失ってしまった。
手放してしまった。
でも、これでいい。
俺は一生暗闇の中でいい。
でも俺は気づいていた自分の本心に。
"また光を心に宿したい"
気づいていたんだ。
そんな時、ある女と出会った。
その時からまたあの時みたいに運命の歯車が動き出していたんだ。
『うざい。』
最近、女どもが悲鳴を上げている。
もう少し静かにしてくれよ。
それよりか黙っててくれねぇーか?
目障りだ。
授業が終わり、俺は天文サークルに入部届けを出しに行こうとしていた。
「『あの、入部届けを出しに・・・』」
ある女と声が重なった。
こいつもここに入るのか。
黒髪のロングでメガネにマスク。
顔がほとんど見えねぇーな。
はたから見たら、地味子...んー、不審者?
いや、口が滑った。
でも、本当にそう見える・・・。
まぁ、見た目も大事と言えば大事だか、本当に大事なのは中身だ。
「・・・あなたもココに入るの?」
そう女に聞かれた。
一瞬花の声に聞こえた。まぁ、あるわけないけどな。
最近俺の妄想が激しい。
これも幻聴なんだろうな。
花の代わりなんて居ないのにな・・・。
知らない奴の声が花の声に聞こえてどうすんだか。
『あぁ。』
幻聴までしだしたのか、頭が混乱しその女に短い返事をしてしまった。
あぁ、行けねぇ。
「これからよろしくねっ」
明るくそう言われる。
やっぱり花の声に聞こえる。
幻聴だ。
やべぇ、今度は無視してしまった。
ダメだ、花のことになるとっ。
女は少し悲しそうな顔をした。
『うん』
結構遅い"うん"だか許してくれ。
悪気はなかったんだ。